書籍詳細

書籍のレビュー・概要

私たちを不意打ちしたパンデミックに対して、人文学は無力だったのだろうか。そうではない。私たちは過去の歴史に、あるいは人類の英知に学ぶことができる。同じ過ちと苦しみを繰り返さないために──一三人の執筆者が、コロナ禍によってもたらされた傷を書きとめ、未来へ紡ぐ。暗中模索する人文学の、いまひとたびの挑戦。

疫病と人文学 あらがい、書きとめ、待ちうける

Takumi ブックス

疫病と人文学 あらがい、書きとめ、待ちうける

著者・関係者
藤原 辰史 編・香西 豊子 編
カテゴリ
人文・社会科学書
刊行日
2025/02/27
体裁
A5・並製 ・358頁
ISBN
9784000223188
在庫状況
在庫あり

価格:3,630 円

カートを見る

著者略歴

  • 【編者】 藤原辰史(ふじはら たつし) 京都大学人文科学研究所准教授.専門は農業思想史,環境史.主な著書として『分解の哲学――腐敗と発酵をめぐる思考』(青土社,2019年),『決定版 ナチスのキッチン――「食べること」の環境史』(共和国,2016年)など. 香西豊子(こうざい とよこ) 佛教大学社会学部現代社会学科教授.専門は医学史,医療社会学.主な著書として『種痘という〈衛生〉――近世日本における予防接種の歴史』(東京大学出版会,2019年),『流通する「人体」――献体・献血・臓器提供の歴史』(勁草書房,2007年)など. 【執筆者】(五十音順) 新井 卓(あらい たかし) アーティスト.核被害や戦争,災害にまつわるトラウマ,歴史と個々人の記憶の関わりを主題に,黎明期写真術・ダゲレオタイプ,映像,インスタレーションを制作する.主な著書として『百の太陽/百の鏡――写真と記憶の汀』(岩波書店,2023年),『MONUMENTS』(PGI, 2015年)など. 石井美保(いしい みほ) 京都大学人文科学研究所教授.専門は文化人類学.主な著書として『裏庭のまぼろし――家族と戦争をめぐる旅』(亜紀書房,2024年),『遠い声をさがして――学校事故をめぐる〈同行者〉たちの記録』(岩波書店,2022年)など. 岩島 史(いわしま ふみ) 京都大学大学院経済学研究科講師.専門はジェンダー史,農村社会学.主な業績として『つくられる〈農村女性〉――戦後日本の農村女性政策とエンパワーメントの物語』(有志舎,2020年),「農村における生活の改善と家電の導入――女性らしさの変容に着目して」(足立芳宏編『農業開発の現代史 冷戦下のテクノロジー・辺境地・ジェンダー』京都大学学術出版会,2022年)など. 粂田昌宏(くめた まさひろ) 京都大学大学院生命科学研究科助教.専門はライフサイエンス,細胞生物学.主な研究分野は細胞骨格,細胞膜,細胞内分子輸送のほか,近年は音波に対する細胞応答の研究に従事. 小堀 聡(こぼり さとる) 京都大学人文科学研究所准教授.専門は日本経済史,環境史.主な著書として『京急沿線の近現代史』(クロスカルチャー出版,2018年),『日本のエネルギー革命――資源小国の近現代』(名古屋大学出版会,2010年)など. 酒井朋子(さかい ともこ) 京都大学人文科学研究所准教授.専門は文化人類学.主な著書として『汚穢のリズム――きたなさ・おぞましさの生活考』(共編著,左右社,2024年),『紛争という日常――北アイルランドにおける記憶と語りの民族誌』(人文書院,2015年)など. 瀬戸口明久(せとぐち あきひさ) 京都大学人文科学研究所准教授.専門は科学史.主な著書として『害虫の誕生――虫からみた⽇本史』(ちくま新書,2009年),『災害の環境史――科学技術社会とコロナ禍』(ナカニシヤ出版,2024年)など. 直野章子(なおの あきこ) 京都大学人文科学研究所教授.専門は社会学,記憶研究.主な著書として『原爆体験と戦後日本――記憶の形成と継承』(岩波書店,2015年),『被ばくと補償――広島,長崎,そして福島』(平凡社新書,2011年)など. 東 昇(ひがし のぼる) 京都府立大学文学部歴史学科教授.専門は文化情報学,日本近世史.主な著書として『京都の産物 献上・名物・土産』(臨川書店,2023年),『近世の村と地域情報』(吉川弘文館,2016年)など. 藤本大士(ふじもと ひろし) ハイデルベルク大学トランスカルチュラル・スタディーズ・センター助教.専門は医学史.主な業績として『医学とキリスト教――日本におけるアメリカ・プロテスタントの医療宣教』(法政大学出版局,2021年),“Circulation of Medical Knowledge and Techniques through Film in Japan, 1929-1941”(East Asian Science, Technology and Society: An International Journal 14, no. 3, 2020)など. リュウシュ マルクス(Rüsch, Markus) ミュンスター大学プロテスタント神学部宗教学文化間神学研究所准教授.専門は宗教学,哲学.主な業績としてArgumente des Heiligen: Rhetorische Mittel und narrative Strukturen in Hagiographien am Beispiel des japanischen Mönchs Shinran(Iudicium, 2019), “Secret Spaces for Amida: The Function of Hidden Space in Rituals and their Doctrinal Background”(Cahiers d'Extreme-Asie 32, 2024)など.

目次

  1. 序章 暗中模索の人文学――つぎの疫病に向けて……………藤原辰史 1 はざまの人文学 2 終わりきらないコロナ禍 3 歴史に学ぶ 4 第一次世界大戦と疫病 5 政治災害としてのコロナ禍 6 人文学の課題としての疫病 Ⅰ 疫病の現場から 罰を受ける母親たち――コロナ禍が映し出すジェンダー不平等とケアの危機……………直野章子 はじめに――追い詰められる母と子 1 ケアに向かう女たち 2 ジェンダー格差とケア・ペナルティ 3 ケアに背を向ける社会 4 ケアの広がり――自立神話に抗して おわりに 水際のインターセクショナリティ――わたしの身体のコロナ、汚れ敗北した、アーカイヴとしての……………新井 卓 はじめに 1 「ステイホーム」の身体、蚕と千人針と虱 2 パンデミック下のわたしの立場性――日本の〈水際〉で家族と引き裂かれる 3 ヘルシンキの汀で、汚染と敗北、そして自由 4 ベルリンとパレスチナの〈水際〉 おわりに 「健康」を賭した選択――予防接種の歴史からの問い……………香西豊子 はじめに 1 江戸時代の疫病と対処法 2 種痘の一世紀 3 予防接種の「副反応」の再発見 おわりに パンデミック下における仏教諸派の変貌――教義・法要・葬儀の観点から……………リュウシュ マルクス はじめに 1 仏教と疫病の小史 2 各宗派のパンデミックに対する声明とその教義的背景 3 コロナ禍における法要の目的と法要のスタイルの変容 4 変わりゆく葬儀とコロナ禍が及ぼした影響 おわりに――コロナ禍を刷新のチャンスと捉えて Ⅱ 過去から現在を投影する 受肉化された「公衆」――近代日本の衛生における「公」と「私」……………香西豊子 はじめに 1 「往来」の衛生 2 「公衆衛生」への疑義 3 「Hygiene」の日本的展開 おわりに 日本資本主義のなかの流行性感冒……………小堀 聡 はじめに 1 流行性感冒の被害と対策・影響 2 資本は流行性感冒をどうみたか 3 個別企業からみる流行性感冒 おわりに 手洗いと石鹸の一〇〇年――統治されない身体の可能性へ……………岩島 史 はじめに――新型コロナウイルスパンデミックと石鹸・手洗い 1 日本における「手洗い」のはじまり 2 戦後の手洗いと石鹸 おわりに 感染症予防啓発のメディア史――戦前日本の衛生映画に注目して……………藤本大士 はじめに――メディアを駆使して感染症対策を広める 1 戦前日本における衛生映画の興隆 2 衛生映画はどこで誰のために上映されたのか 3 衛生映画は誰が製作したのか 4 衛生映画の限界 おわりに――感染症対策と動画メディアの今昔 近世後期天草の疱瘡体験――流行病が村や個人にもたらしたもの……………東 昇 はじめに 1 せまりくる疱瘡への村の対応――「慶助崩」が遺したもの 2 翻弄されても生き抜く――家・個人それぞれの影響 3 個人に体験された疱瘡――庄屋の妻「上田さほ」の養生記録から おわりに Ⅲ 他者との遭遇と変貌 ウイルスの変容、ヒトの変容――いたちごっこと因果関係の循環……………粂田昌宏 はじめに 1 ウイルスの拡散と変容 2 コロナウイルスの生活サイクルと変異 3 ウイルスの変容とヒトの変容のいたちごっこ 4 いたちごっこの行く末 おわりに――いたちごっこはおわらない 「軍事空間」としてのパンデミック――COVID-19とマラリア……………瀬戸口明久 はじめに 1 計算される世界――感染症数理モデルの誕生 2 監視される世界――感染症サーベイランスの誕生 おわりに――ペスト・天然痘・マラリア 手の不穏な物神性――あいまいで多義的な手洗いについて……………酒井朋子 はじめに 1 清潔の文化史における例外的な身体部位としての手 2 手の不穏なエージェンシーと伝染 おわりに 驚きを待ち受ける――人間‐野生の関係と人獣共通感染症……………石井美保 はじめに 1 「人類への警鐘」としてのパンデミック 2 感染症に対処する社会の技術 3 感染症への対処と生政治 4 人と野生との関係 5 驚きを待ち受ける おわりに 終章 「死者」からみる疫病……………香西豊子 はじめに――疫病の「なぜ」と「どのように」 1 近世期における医薬の領域の拡大 2 伝播する病原体、人体という器 3 「死者」を数える近代 おわりに あとがき……………編 者

本文紹介

コロナ禍とは何だったのか。一三人の執筆者が、厄災によってもたらされた傷を書きとめる。未来へ繋げるための、人文学の挑戦。

抜粋:私たちを不意打ちしたパンデミックに対して、人文学は無力だったのだろうか。そうではない。私たちは過去の歴史に、あるいは人類の英知に学ぶことができる。同じ過ちと苦しみを繰り返さないために──一三人の執筆者が、コロナ禍によってもたらされた傷を書きとめ、未来へ紡ぐ。暗中模索する人文学の、いまひとたびの挑戦。