書籍詳細

書籍のレビュー・概要

ナポレオン侵攻前夜にモスクワで生まれ、「パリ・コンミューン」前夜にパリで没したアレクサンドル・ゲルツェン(一八一二―一八七〇)。近代史のこの転換期に「人間の自由と尊厳」の旗を掲げてロシアから西欧へと駆け抜けた、一人の亡命者の壮烈な人生の幕が今開く。第一分冊は生い立ちから政治に目覚めた青年時代まで。(全七冊) ■ゲルツェン『過去と思索』(全7冊)に寄せて ロシアと西欧、公と私、過去と現在──境界を超えて思索を続けるゲルツェンの内面から放たれる圧倒的な熱量は、いまなお読む者に新たな思考力を与えてくれる。凄惨な暴力が世に蔓延る時代に、言論、人間、社会における抑圧からの自由を追求する意味を、ゲルツェンの代表作とともにもう一度考えたい。 ──奈倉有里さん ■訳者からのメッセージ 岩波文庫の「青帯」にはプラトン、アリストテレス、老子、孟子など、文字通り古今東西の大思想家たちの著作が綺羅星の如く並んでいますが、この度、ロシアの思想家として久しぶりに、ゲルツェンの作品『ロシアの革命思想』と『過去と思索』が、この列に名を連ねることになりました。嬉しいことです。 ゲルツェンは1812年、ナポレオンのロシア侵攻の前夜にモスクワで生まれ、パリ・コンミューン(1871年)の前夜たる1870年にパリで没しました。享年57でした。1847年、ロシアを出国したゲルツェンはそのまま帰国せず、ロシア史上初の政治的亡命者となりました。 ピョートル大帝がロシアに近代文明をもたらし、エカテリーナ二世がロシアに近代文化をもたらしたことになぞらえれば、ゲルツェンが一貫して追求したのは、ロシアに「近代人」を創り出すことでした。彼にとって「近代人」とは「自立的な自己意識を持った人間」のことです。彼自身はそのような者として、「人間の尊厳と自由」の旗印を高々と掲げ、専制と農奴制の国・ロシアと横暴な「資本」の支配する西欧を駆け抜けました。 ゲルツェンはドストエフスキーやトルストイのような文豪ではなく、また、バクーニンのような革命の使徒ではありませんでしたが、よく考え、そして、よく生きた人でした。彼の思想には「体系」や「理論」はありません。彼はむしろ、そのようなものを積極的に拒否しました。それというのも、彼の関心はそれぞれの時代、それぞれの社会を生きる一人一人の人間の喜怒哀楽にこそあったからです。人々の多種多様な生を抽象的・一般的な「理論」や「体系」の中に押し込めてしまうことが、彼には人間の生そのものを貶めるように思われたのです。 ゲルツェンは預言者ではありません。彼の思想に出来合いの答えを求めることはできません。彼の思想に「教え」を求めようとするならば、人は、所詮、自分のありとあらゆる知的・感覚的能力を総動員して、それぞれの時代や社会に立ち向かう他はない、という潔さでしょう。自叙伝『過去と思索』はそのように生きた一人の人間の生涯の記録です。 ──長縄光男(『過去と思索』訳者) Web岩波「たねをまく」で解説の一部を公開中≫

過去と思索 (一)

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過去と思索 (一)

著者・関係者
ゲルツェン 著・金子 幸彦 訳・長縄 光男 訳
カテゴリ
新書
刊行日
2024/05/15
体裁
文庫・510頁
ISBN
9784003860403
在庫状況
在庫あり

価格:1,507 円

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著者略歴

  • ゲルツェン 1812-1870. 近代ロシアを代表する知識人。ロシア初の政治的亡命者。主著に『ロシアの革命思想』『向こう岸から』ほか。 金子 幸彦(かねこ ゆきひこ) 1912-1994. ロシア文学者。『プーシキン詩集』『イワンのばか』『オブローモフ主義とは何か』など訳書多数。 長縄 光男(ながなわ みつお) 1941年生。横浜国立大学名誉教授。ロシア社会思想史。著書に『評伝ゲルツェン』『ゲルツェンと1848年革命の人びと』ほか。訳書にゲルツェン『ロシアの革命思想』、同『向こう岸から』ほか。

目次

  1. 凡 例 ゲルツェン関係地図 モスクワ要図 ゲルツェン家系図 まえがき ルーシの同胞たちに 第一部 子供部屋と大学(一八一二―一八三四) 第一章 幼年時代 ばあやと大軍団 モスクワの火事 ナポレオンとわたしの父 イロワーイスキー将軍――フランス人捕虜との旅行 愛国主義 カロ 領地の共同管理 セナートル 第二章 少年時代 ばあやたちの話と将軍たちの会話 間違った境遇 召使たちの生活 ヤーコヴレフ家の召使たち 勉強と読書 二人のドイツ人 教理問答書と福音書 第三章 政治的目ざめ アレクサンドル一世の死と十二月十四日 精神的な目ざめ テロリスト・ブーシェ コールチェワの従姉 ワシーリエフスコエ村の思い出 第四章 ニックと雀が丘 第五章 父のこと ロシアにおける十八世紀の人びと 家庭生活の詳細 一日の生活 ゾンネンベルク 侍僕とその他の人びと 第六章 学生時代 クレムリン政庁とモスクワ大学 「化学者」とわたし マーロフ事件 学生時代の教授たち コレラ事件 七月革命の影響とパッセク家の人びと スングーロフ事件とペトラシェーフスキー事件 第七章 大学を終えて 卒業 シラー時代 青春とボヘミアン風の生活 サン・シモン主義とポレヴォーイ つけたり アレクサンドル・ポレジャーエフ 第二部 牢獄と流刑(一八三四―一八三八) 第八章 オガリョーフの逮捕 予言 オガリョーフの逮捕 火事とモスクワの自由主義者 オルローフ 墓地 第九章 わたしの逮捕 逮捕 プレチーステンカ地区警察署の事務室 第十章 留置場で 見はり塔の下で リスボンの刑事 放火犯 第十一章 クルチーツキー兵舎 クルチーツキー兵舎 老憲兵の物語 士官の話 第十二章 結 審 審理 ゴリーツィン〈ジュニア〉 判決 訳 注 訳者解説1 略年譜1

本文紹介

人間の自由と尊厳の旗を掲げてロシアから西欧へと駆け抜けた、亡命者の壮烈な人生の幕が今開く。自伝文学の最高峰。(全七冊)

抜粋:ナポレオン侵攻前夜にモスクワで生まれ、「パリ・コンミューン」前夜にパリで没したアレクサンドル・ゲルツェン(一八一二―一八七〇)。近代史のこの転換期に「人間の自由と尊厳」の旗を掲げてロシアから西欧へと駆け抜けた、一人の亡命者の壮烈な人生の幕が今開く。第一分冊は生い立ちから政治に目覚めた青年時代まで。(全七冊) ■ゲルツェン『過去と思索』(全7冊)に寄せて ロシアと西欧、公と私、過去と現在──境界を超えて思索を続けるゲルツェンの内面から放た…