書籍詳細

書籍のレビュー・概要

被災者らの声を排し、行政主導の公共事業によって変質した地域――。はたして、これが「復興」と呼べるのだろうか。被災者当事者である執筆者らは、コミュニティの維持や故郷の再生に向け、3・11以降、活動と研究を重ねた。被災者不在の復興の実態や要因を問い直し、いま自分たちの言葉で、あるべき地域の未来を構想する。 ■ 推薦 赤坂憲雄 氏(学習院大学教授) 震災復興はまぼろしだった。被災・避難・被害の当事者は復興の現場から追われ、なき者とされた。加害当事者は生き残った。膨大な復興予算の多くはあまねく分配されたが、当事者には届かなかった。いま、そこには人なき荒野が広がり、巨大な防潮堤がそびえている。風評加害だなんて、暴力の追い討ちを許すな。遅くはない、見えない存在に貶められてきた、いまも避難している当事者たちの声に、身を寄せることにしよう。 小熊英二 氏(慶應義塾大学教授) 読みやすい本とはいえない。まとまりのよい本でもない。それでもこの本は、このような形でしか語れないことを扱っている。それは「復興という暴力」や「(なまじ知ったつもりになっている)不理解」に抗して、彼らが何を「取り戻そう」としているかを示すことである。読めば何かの異物のように、心と頭に残るものがあるだろう。 山内明美 氏(宮城教育大学准教授) 被災当事者を「風評加害者」と呼んで抑圧する動きのあることを、あなたは知っているだろうか。復興政策が当事者排除のうえで成立していることを、あなたはどれくらい知っているだろうか。

被災者発の復興論

Takumi ブックス

被災者発の復興論

3・11以後の当事者排除を超えて

著者・関係者
山下 祐介 編・横山 智樹 編
カテゴリ
人文・社会科学書
刊行日
2024/03/08
体裁
四六・並製 ・258頁
ISBN
9784000245548
在庫状況
在庫あり

価格:2,860 円

カートを見る

著者略歴

  • 山下祐介(やました・ゆうすけ) 東京都立大学教授.1969年生.九州大学大学院文学研究科博士課程中退(社会学),九州大学助手,弘前大学助教授等を経て現職.著書に『限界集落の真実』『東北発の震災論』『地域学入門』(ちくま新書),『「復興」が奪う地域の未来』(岩波書店),『地域学をはじめよう』(岩波ジュニア新書).また市村高志・佐藤彰彦との共著『人間なき復興』(ちくま文庫)など. 横山智樹(よこやま・ともき) 日本学術振興会特別研究員PD.1994年生.神奈川県横須賀市出身.東京農工大学農学部卒業,東京都立大学大学院人文科学研究科博士後期課程修了,博士(社会学).主要論文に「原発被災地の復興過程における「通うこと」「帰ること」の意味」『社会学評論』第70巻第4号,「原発事故後の統治と被災者の〈生〉――福島復興政策における分断・排除と再編の論理」『都市社会研究』第13号.福島県南相馬市(現地NPO)や富岡町(とみおか子ども未来ネットワーク)での活動に携わる.2つの地域を主なフィールドとして,農村社会学や地域社会学の視点から原発被災地域の復興過程を研究. [執筆者一覧] 阿部晃成(あべ・あきなり) 雄勝町の雄勝地区を考える会代表,宮城大学特任助教.1988年生.宮城県桃生郡雄勝町(現・石巻市雄勝町)出身.東日本大震災の津波により,一家7人で一晩漂流するも奇跡的に生還.その後,住民・行政・支援者などでつくる雄勝地区復興まちづくり協議会に参加する傍ら,石巻市内各地に散らばった被災者が集まり,自らで復興を話し合うため雄勝町の雄勝地区を考える会を設立し事務局を担う.漁業・林業などの一次産業分野で社会起業を行う.一度地域を離れ,慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科で修士号を取得.現在は雄勝町に暮らし地域活動,大学教員,復興に関わる情報発信を行う. 市村高志(いちむら・たかし) 公共政策学修士,専門社会調査士.1970年生.福島第一原子力発電所事故によって福島県双葉郡富岡町から広域避難者となる.その後に,とみおか子ども未来ネットワーク共同代表(2022年7月に法人解散)として市民活動を行う.原発事故前はIT関連の自営業をしており,PTA会長や祭りの実行委員長など富岡町の地域活動にも従事.現在は法政大学大学院公共政策研究科公共政策学専攻博士後期課程に在籍し,原発事故問題などを中心に公共政策の研究をしている. 三浦友幸(みうら・ともゆき) 一般社団法人プロジェクトリアス代表理事,気仙沼市議会議員.1980年生.宮城県気仙沼市出身.東日本大震災により自宅を被災し母を喪う.避難所の事務局長を担い,その後,復興支援に関するNPO活動や,防潮堤問題に対して政策提言,合意形成の活動,気仙沼市大谷海岸の砂浜を守るための計画変更に携わった. 宮本楓美子(みやもと・ふみこ) フリーランス広報・ライター.1987年生.福島県,福岡県などで育つ.九州大学文学部卒業後,都内玩具メーカーに勤務1年目で東日本大震災が発生.同郷の子どもたちが被災し,故郷を追われる状況に疑問を持ち,山下祐介ゼミの門を叩く.東京都立大学大学院人文科学研究科社会行動学専攻社会学教室博士前期課程修了.現在は千葉ニュータウン夏祭り御神輿保存会や,女性と社会をつなぐ場づくりなど地域活動を実践する一方,震災研究をライフワークとする在野研究者として本書に参加.一児の母. 成田 凌(なりた・りょう) 宮城学院女子大学准教授.1990年生.青森県南津軽郡田舎館村出身.弘前大学人文学部卒業,東京都立大学大学院人文科学研究科博士後期課程修了,博士(社会学).主要論文に「「潜在的還流者」導出に向けた分析視角の検討――Hold概念を手がかりとして」『日本都市社会学会年報』第37号.

目次

  1. はじめに 第Ⅰ部 被災者が排除される復興の現実 第1章 復興の主体は誰か――被災各地の「復興」を振り返る(横山・阿部・市村・三浦・山下) 1 誰のため、何のための「復興」か 2 巨大防潮堤の建設と高台移転が切り捨てたもの――宮城県石巻市雄勝町雄勝地区 3 広域避難下の町外コミュニティの模索と、住民不在の帰還政策――福島県双葉郡富岡町 4 大谷海岸の防潮堤建設を住民の合意で変更へ――宮城県気仙沼市本吉町大谷地区 5 当事者排除の復興政策を超えるために 第2章 福島発の「復興論」がもたらした当事者排除――三つの論から(宮本) 1 福島の「復興論」 三つの視点 2 避難元自治体「富岡町」としての復興論――市村高志『人間なき復興』から 3 「福島県」としての復興論――開沼博『はじめての福島学』から 4 「浜通り」としての復興論――小松理虔『新復興論』から 5 三者が代表する立場とは何か 6 当事者とは誰か――被災当事者・避難当事者・被害当事者についての考察 7 被災・避難の当事者を包摂する“真の復興”へ 8 新たな当事者「風評加害者」の登場(追記) 第3章 政府の復興政策の変容をみる――置き去りにされた被災当事者(横山・山下) 1 被災当事者排除のメカニズムとは 2 津波被災地域の「復興」と防潮堤および防災集団移転 3 原発事故後の「復興」と早期帰還政策 4 復興政策の失敗をどうみるか 第Ⅱ部 復興と「戻る」こと 第4章 地域の未来を支えるのは誰か――地域と人を結ぶ力(成田・横山) 1 地域とつながろうとする力 2 地域を形成しそこに人を引き留め置く力――ホールドとは何か 3 津波・原発被災地にみられる被災者へのホールド 4 復興におけるつなぐ力・戻る力・地域を戻す力の意義 第5章 故郷としての被災地に関わる――富岡・南相馬・雄勝で被災した若者たちの現在(横山・市村・阿部・成田) 1 地域を継承する論理とは 2 富岡町――聞き書き作品づくりでの記憶の継承と町民アイデンティティの再構築へ 3 南相馬市原町区――若者の被災・避難と農家生活の継承 4 雄勝町――雄勝小学校を卒業した若者のその後 5 震災経験を経て、何を、どう継承していくのか 第Ⅲ部 被災者のための復興を構想する 第6章 当事者と復興――被災者発の復興論へ(座談会)(山下・阿部・三浦・市村/横山・宮本) パート1 災害と復興をめぐる当事者について――当事者排除がもたらすもの 1 自らの当事者性について 2 当事者の向こうにいる別の当事者――被災者排除の過程 3 核心にいる当事者は声が出せない 4 当事者性を曖昧にしてはいけない 5 その結果、復興はどうなったか パート2 復興を被災者のものにするために――当事者排除の原因は何か 1 当事者排除が生じた理由 2 間違った形の復興ヘ 3 加害者優位の原発事故 4 この復興の形を決めたのは誰か 5 国策においては誰もが当事者である 第7章 復興における当事者性について(山下) 注 あとがき 主要参考文献

本文紹介

被災者不在の公共事業で変質した地域。はたしてこれは「復興」なのか。被災当事者らが自らの言葉で、あるべき地域の未来を問う。

抜粋:被災者らの声を排し、行政主導の公共事業によって変質した地域――。はたして、これが「復興」と呼べるのだろうか。被災者当事者である執筆者らは、コミュニティの維持や故郷の再生に向け、3・11以降、活動と研究を重ねた。被災者不在の復興の実態や要因を問い直し、いま自分たちの言葉で、あるべき地域の未来を構想する。 ■ 推薦 赤坂憲雄 氏(学習院大学教授) 震災復興はまぼろしだった。被災・避難・被害の当事者は復興の現場から追われ、なき者とされた。加害…