書籍詳細

書籍のレビュー・概要

新自由主義の浸透によって格差や貧困、環境破壊が拡大し、人間の生きる場が崩されている。あらゆる決定を市場と為政者に委ねてよいのか。いまこそ人びとの共同意思決定のもと財政を有効に機能させ、危機を克服しなければならない。日本の経済と民主主義のありようを根源から問い直し、人間らしく生きられる社会を構想する。

財政と民主主義

Takumi ブックス

財政と民主主義

人間が信頼し合える社会へ

著者・関係者
神野 直彦 著
カテゴリ
文庫
刊行日
2024/02/20
体裁
新書・264頁
ISBN
9784004320074
在庫状況
在庫あり

価格:1,100 円

カートを見る

著者略歴

  • 神野直彦(じんの・なおひこ) 1946年埼玉県生まれ. 東京大学経済学部卒業.東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学. 東京大学名誉教授.財政学. 著書に『システム改革の政治経済学』『経済学は悲しみを分かち合うために──私の原点』(以上,岩波書店),『「分かち合い」の経済学』(岩波新書),『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書),『財政学』(有斐閣),『地域再生の経済学──豊かさを問い直す』(中公新書)など.

目次

  1. 序 章 経済危機と民主主義の危機 民主主義による貨幣現象としての財政 社会システムにおける生命活動 財政の三つの役割 財政によるシステム統合 市場経済に抱かれる国家 民主主義に希望を託して 第1章 「根源的危機の時代」を迎えて 人類の存続が脅かされる危機 「生」は偶然だが、「死」は必然である 内在的危機と外在的危機 二つの環境破壊 所有欲求か存在欲求か 誤ったハンドル操作による自然環境の破壊 新自由主義の「政府縮小─市場拡大」戦略の登場 新自由主義による社会環境の破壊 共同体の崩壊と原理主義の台頭 地域社会の変容 第2章 機能不全に陥る日本の財政──コロナ・パンデミックが浮き彫りにした問題 転換期に繰り返されてきたパンデミック コロナ・パンデミックへの財政動員 日本型コロナ・パンデミック対応の問題 医療費抑制圧力の悲劇 なぜ「医療崩壊」を招いたのか 費用保障としての医療保険 公的医療機関の少ない日本 浮き彫りになった日本財政の無責任性 人間の生存に必要な対人サービス 労働市場と家族の変容 対人社会サービスへアクセスする権利保障 エッセンシャル・ワーカーの劣悪な労働条件 「規制・統制」受容の代償 生活面よりも生産面を優先した日本の対応 問われる財政の使命 財政縮小路線の大転換 財政機能の衰退 いまこそ財政の使命を拡大する戦略へ 第3章 人間主体の経済システムへ──民主主義を支える財政の意義 「生」への省察の覚醒 未来の選択を民主主義に委ねる 民主主義を有効に機能させる 社会システムを活性化する 民主主義を下から機能させる 財政を機能させる 「参加社会」か、「観客社会」か 「参加社会」を成り立たせるもの 「観客社会」における民主主義への不信と絶望 熟議にもとづくスウェーデンのコロナ対応 「強い社会」というヴィジョンの構想 熟議と連帯というプロセス 人間不在の「新しい資本主義」のヴィジョン 人間を「手段」とするか、「目的」とするか 実態をともなわない「成長と分配の好循環」 知識社会のインフラストラクチュアとしての教育 人間が人間として成長するための「学び直し」 対人社会サービスの充実と地方自治体の役割 協力原理で下から民主主義を積み上げる 第4章 人間の未来に向けた税・社会保障の転換──いま財政は何をすべきか 人間の生命活動を支える帰属所得 「社会保険国家」から「社会サービス国家」へ 現金給付と現物給付の役割 「社会保険国家」となっている日本 現物給付の少ない日本 「全世代型社会保障」の光と影 現物給付なき高齢者福祉の悲劇 声なき声の民主主義 子どもたちが育ちたいと思う社会へ 租税負担の低い「小さすぎる政府」 低すぎる公的負担がもたらす苦しい生活 共同事業のための共同負担の必要性 「小さな政府」の逆進性 資本に軽く、労働に重いという「逆差別性」 富裕税の創設を 利益原則にもとづく消費課税 「大きな政府」の逆進性、「小さな政府」の累進性 「事後的再分配」から「事前的再分配」へ 国民による財政のコントロールが困難な日本 財政民主主義を機能させる「三つの政府体系」 第5章 人間らしく生きられる社会へ──地域の協働と民主主義の再生へ 太った豚になるよりも、痩せたソクラテスになれ 「量」の経済から「質」の経済へ 地域社会から存在欲求を充実させる 崩れ落ちる地域共同体 持続可能な都市の創造──地域の生活機能の再生から 「環境」と「文化」を取り戻すストラスブール 「公園のような都市」づくり──ドイツ・ルール地方 経済指標から社会指標へ 大正デモクラシーの教訓 信州で芽生えた国民教育運動 民主主義の活性化に向けた自治体の役割 巨大な富の支配と民主主義の危機 グラス・ルーツでの対抗とポピュリズムの台頭 形骸化した民主主義を再創造するために おわりに──人間を人間として充実させるヴィジョンを描くために あとがき 主要参考文献

本文紹介

あらゆる決定を市場と為政者に委ねてよいのか。市民の共同意思決定のもと財政を機能させ、人間らしく生きられる社会を構想する。

抜粋:新自由主義の浸透によって格差や貧困、環境破壊が拡大し、人間の生きる場が崩されている。あらゆる決定を市場と為政者に委ねてよいのか。いまこそ人びとの共同意思決定のもと財政を有効に機能させ、危機を克服しなければならない。日本の経済と民主主義のありようを根源から問い直し、人間らしく生きられる社会を構想する。