書籍詳細

書籍のレビュー・概要

1918年のインフルエンザ・パンデミックに際し、その病原体がウイルスであることを示した日本人がいた。埋もれていた論文の著者山内保は、細菌よりも小さく「見えない」病原体に、どのようにして迫りえたのか。黄金期のパスツール研究所に連なる病原体の狩人たちの事績と人生をたどり、医学探究のドラマを描きだす。 著者からのメッセージ 次々と病原菌が同定されていった「細菌の狩人」の時代から新しい医学が展開し始めた20世紀前半に,山内保は研究の世界的な中心地であったパスツール研究所に飛び込んで,ノーベル賞を受賞するメチニコフをはじめとした第一級の人々との人脈を築いた.そのような人脈を築くことのできた山内はすばらしいし,大変スマートな人物でもあったと思われる. その人脈の中で,山内はしっかりと最先端の仕事をした.その状況の中に私自身を置いたような気持ちで,研究の背景を考えながら,人物像を描きだそうとした. この物語は,友人でもありウイルス学の第一人者であるフレッド・マーフィーからの問合せから始まった.マーフィーは山内の仕事を非常に高く評価し,彼が書いたウイルス学の基盤についての大著の記述を書き換えた.その後,パスツール研究所からも問合せがあり,さらに物語が進むことになった.不思議な縁があった. この十数年間,山内を追いかけて,その時代の微生物学の進展を一次資料をもとにたどることができて,大変楽しんだ.この仕事ができあがるとは思っていなかったが,思いがけずいろいろな情報が入ってきて,まとめることができた. (談)

インフルエンザウイルスを発見した日本人

Takumi ブックス

インフルエンザウイルスを発見した日本人

著者・関係者
山内 一也 著
カテゴリ
自然科学書
刊行日
2023/08/04
体裁
B6・並製 ・126頁
ISBN
9784000297219
在庫状況
在庫あり

価格:1,540 円

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著者略歴

  • 山内一也(ヤマノウチ カズヤ) 1931年,神奈川県生まれ.東京大学農学部獣医畜産学科卒業.農学博士.北里研究所所員,国立予防衛生研究所室長,東京大学医科学研究所教授,日本生物科学研究所主任研究員を経て,現在,東京大学名誉教授,日本ウイルス学会名誉会員,リエージュ大学(ベルギー)名誉博士. 主な著書に『エマージングウイルスの世紀』(河出書房新社),『史上最大の伝染病 牛疫』,『ウイルスと地球生命』,『ワクチン学』(共著),『近代医学の先駆者』,『エボラ出血熱とエマージングウイルス』,『はしかの脅威と驚異』,『新版 ウイルスと人間』(以上,岩波書店),『ウイルス・ルネッサンス』(東京化学同人),『ウイルスの意味論』,『ウイルスの世紀』,『異種移植』(以上,みすず書房)などがある.

目次

  1. 序章 インフルエンザウイルスの発見者T ・ヤマノウチとは誰か 友人からの突然の問合せ 新聞記事に学界権威として現れた名前 発見者の改訂へ パスツール研究所との新たなつながり 1 インフルエンザ菌からインフルエンザウイルスへ――インフルエンザの原因探究の歴史 インフルエンザの歴史と細菌説の登場 一九一八〜一九年パンデミック:プファイフェル菌が病原菌なのか 山内の実験と主張:濾過性ウイルスへ 際立っていた山内の報告 コラム◎共同研究者の坂上弘蔵と岩島寸三 その後の展開 ウイルスの発見と分離 2 天才の直感と濾過性ウイルスの概念の確立 パスツールの直感 狂犬病ワクチンの開発 パスツール研究所の創立 黄金期を迎えたパスツール研究所 ラントシュタイナーとレヴァディティのポリオウイルスの実験 コラム◎ラントシュタイナーの血液型発見 3 パスツール研究所の黄金期を支えたメチニコフ――波乱の人生を歩んだ異才 生まれながらにして天才科学者 動物学者としての道 食細胞の発見 パスツールとの出会い パスツール研究所での日々 長寿への関心と梅毒のサル実験モデルの確立 コレラ菌の人体実験から生まれたプロバイオティクス 第一次世界大戦の勃発 コラム◎破傷風抗血清の腐敗防止とワクチン開発 コラム◎日本と強い絆をもった次兄のレフ・メチニコフ 4 パスツール研究所で山内が行った先端研究 パスツール研究所で学んだ最初の日本人 当時先端の研究課題にとりくむ 梅毒の血清診断と動物モデル アトキシルと睡眠病 コラム◎梅毒治療薬サルバルサンの開発 ウィーン大学でのアナフィラキシーの研究 外科医ドワイヨンとの共同研究 コラム◎長野泰一のウイルス抑制因子(=インターフェロン)発見の論文 5 メチニコフのロシア調査団と野口英世のパスツール研究所訪問――山内の貴重な体験 メチニコフのロシア調査団 コラム◎ツベルクリンの歴史 野口英世のパスツール研究所訪問 6 山内保の生い立ちとその後 山内保の生い立ちから渡欧まで 日本の研究界への批判 野口英世の純粋痘苗(天然痘ワクチン)の臨床応用 コラム◎痘苗からの細菌除去 山内保事件 おわりに 文 献

本文紹介

知られざる医学者山内保とは誰か。黄金期のパスツール研究所に連なる病原体の狩人たちの探究のドラマ。

抜粋:1918年のインフルエンザ・パンデミックに際し、その病原体がウイルスであることを示した日本人がいた。埋もれていた論文の著者山内保は、細菌よりも小さく「見えない」病原体に、どのようにして迫りえたのか。黄金期のパスツール研究所に連なる病原体の狩人たちの事績と人生をたどり、医学探究のドラマを描きだす。 著者からのメッセージ 次々と病原菌が同定されていった「細菌の狩人」の時代から新しい医学が展開し始めた20世紀前半に,山内保は研究の世界的な中心…