書籍のレビュー・概要
1918年のインフルエンザ・パンデミックに際し、その病原体がウイルスであることを示した日本人がいた。埋もれていた論文の著者山内保は、細菌よりも小さく「見えない」病原体に、どのようにして迫りえたのか。黄金期のパスツール研究所に連なる病原体の狩人たちの事績と人生をたどり、医学探究のドラマを描きだす。 著者からのメッセージ 次々と病原菌が同定されていった「細菌の狩人」の時代から新しい医学が展開し始めた20世紀前半に,山内保は研究の世界的な中心地であったパスツール研究所に飛び込んで,ノーベル賞を受賞するメチニコフをはじめとした第一級の人々との人脈を築いた.そのような人脈を築くことのできた山内はすばらしいし,大変スマートな人物でもあったと思われる. その人脈の中で,山内はしっかりと最先端の仕事をした.その状況の中に私自身を置いたような気持ちで,研究の背景を考えながら,人物像を描きだそうとした. この物語は,友人でもありウイルス学の第一人者であるフレッド・マーフィーからの問合せから始まった.マーフィーは山内の仕事を非常に高く評価し,彼が書いたウイルス学の基盤についての大著の記述を書き換えた.その後,パスツール研究所からも問合せがあり,さらに物語が進むことになった.不思議な縁があった. この十数年間,山内を追いかけて,その時代の微生物学の進展を一次資料をもとにたどることができて,大変楽しんだ.この仕事ができあがるとは思っていなかったが,思いがけずいろいろな情報が入ってきて,まとめることができた. (談)