書籍のレビュー・概要
教員七年目、松本サリン事件の現場から近い高校に転勤した著者が生徒たちと模索した教育実践、歴史総合の授業を充実させるための作戦(方法)を経て、学習指導要領の内容とはかなり異なる授業プラン、「世界史の学び方一〇のテーゼ」まで。国民国家とは何かを掘り下げ、世界史とは何かを探究し、自分を磨く特別授業。 2022年度から全国の高校で新科目「歴史総合」が始まりました。本書は、「歴史総合」をはじめとする歴史系の科目が深い学びになることを願って、「世界史とは何か」というテーマを考えます。読者として想定しているのは、高校教員だけでなく、歴史教育に関心をもってくださる一般市民の皆さん、教育に携わる皆さん、何より高校生・大学生の皆さんです。 現代日本では、国も都道府県教育委員会も、「変化の激しい予測困難な時代」の今は、これまでの教育のあり方が抜本的に変革されるべきだとして、パイロット校を次々作り、その実践例をもとに学校の教室に大改革を求めています。教育行政のことばが、パイロット校の成果を身にまとって、ノルマの指示であるかのように降ってくるのです。 私は、それにどうしてもなじめません。教室の学びとはこれまでに人類が蓄積してきた学問の宝庫を見つめつつ、人々の未来の幸せのために、それをどう活用していくかを探究するいとなみだと考えるからです。世界史はつねに「変化の激しい予測困難な時代」の連続であり、あえて現代を定義するならば、「人類が地球社会を未来に存続させることがより困難になっている時代」である現実のほうを見つめるべきだと思います。予測が困難なのではなく、生き続けていくことが困難なのです。私は、蓄積された学問を創造的に探究して、未来の困難に向かってどう生きるかを考えるような、新しい教育実践の挑戦を積み上げていきたいと考えています。 (「はじめに」より)