書籍のレビュー・概要
小学校のプールで失われた命。なぜ、どうして、事故は起きてしまったのか。受容と忘却の圧力に抗い、「その時」に迫ろうとする両親と同行者たちの苦悩と行動。そこから浮かびあがる学校や行政の姿。同行者の一人として出来事にかかわった文化人類学者が、多声的な語りから亡き人とともに生きることの意味と可能性を考える。 ■推薦コメント もう放心状態だ。会ったことのない羽菜ちゃんの姿が、心の中で像を結び始めている。まさか読後にこんな世界が待っていたなんて。 たったひとりの子どもを失った両親の、癒えることのない痛み。学校も行政も、日常の回復を急ぎ、その痛みから離れていく。これはまるで私が生きる社会の鈍さそのものだ。だから私も探す。羽菜ちゃんの声を。どれほど難しくても、生のあかしを、その温度を。 ――藤原辰史