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書籍詳細

書籍のレビュー・概要

「アラブの春」を発端とする紛争勃発から10年。主権国家の秩序がいっそう揺らぎ、非国家主体の影響力が増すなかで、その代表的存在であるクルド人勢力についての学術研究はいまだに手薄い。地域研究、国際関係論、政治学の方法論を駆使して世界最大規模の国を持たない民族、クルド人の実像に迫り、クルド問題研究のフロンティアを切り拓く。

クルド問題 非国家主体の可能性と限界

Takumi ブックス

クルド問題 非国家主体の可能性と限界

著者・関係者
今井 宏平 編
カテゴリ
人文・社会科学書
刊行日
2022/02/22
体裁
A5・上製 ・カバー ・164頁
ISBN
9784000226462
在庫状況
在庫あり

価格:3,960 円

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著者略歴

  • [編者] 今井宏平(いまい こうへい) 1981年生まれ。中東工科大学(トルコ)国際関係学部博士課程修了。Ph. D.(International Relations)。中央大学大学院法学研究科政治学専攻博士後期課程修了。博士(政治学)。日本貿易振興機構アジア経済研究所・研究員。専門はトルコの政治と外交、国際関係論。著書に『トルコ現代史――オスマン帝国崩壊からエルドアンの時代まで』(中公新書、2017 年)、The Possibility and Limit of Liberal Middle Power Policies: Turkish Foreign Policy towardthe Middle East during the AKP Period (2005-2011)(Lexington Books, 2017)などがある。 [執筆者] 今井宏平(編者) [はじめに、第1章、第4章、第5章、おわりに、クルド問題略年表] 吉岡明子(よしおか あきこ) [第1章、第2章] 1975年生まれ。日本エネルギー経済研究所中東研究センター・研究主幹。現代中東研究、イラクの政治と経済。『「イスラーム国」の脅威とイラク』(共編、岩波書店、2014年)、『現代イラクを知るための60章』(共編著、明石書店、2013年)ほか。 青山弘之(あおやま ひろゆき) [第1章、第3章] 1968年生まれ。東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。シリアとレバノンの政治と外交。『膠着するシリア――トランプ政権は何をもたらしたか』(東京外国語大学出版会、2021年)、『シリア情勢――終わらない人道危機』(岩波新書、2017年)ほか。 廣瀬陽子(ひろせ ようこ) [第2章] 1972年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部教授。コーカサス地域研究、国際関係論。『ハイブリッド戦争――ロシアの新しい国家戦略』(講談社現代新書、2021年)、『コーカサス国際関係の十字路』(集英社新書、2008年[アジア・太平洋賞特別賞受賞])ほか。 阿部利洋(あべ としひろ) [第3章] 1973年生まれ。大谷大学社会学部教授。社会学、紛争解決論。Unintended Consequencesin Transitional Justice: Social Recovery at the Local Level (Lynne Rienner Publishers,2018)、『真実委員会という選択――紛争後社会の再生のために』(岩波書店、2008年)ほか。 岡野英之(おかの ひでゆき) [第4章] 1980年生まれ。近畿大学総合社会学部特任講師。武力紛争、平和構築、国家の統治(汚職や人脈)についての研究、文化人類学。「シエラレオネにおける国家を補完する人脈ネットワーク――エボラ危機(2014-2016年)からの考察」(末近浩太・遠藤貢編『紛争が変える国家グローバル関係学4』岩波書店、2020年)、『アフリカの内戦と武装勢力――シエラレオネにみる人脈ネットワークの生成と変容』(昭和堂、2015年)ほか。 辻田俊哉(つじた としや) [第5章] 1976年生まれ。関西外国語大学英語国際学部准教授。国際関係論、国際安全保障論。「紛争――イスラエル・パレスチナ間における非対称的関係の再検討」(浜中新吾編著『イスラエル・パレスチナ 中東政治研究の最前線3』ミネルヴァ書房、2020年)、「イラン核合意と中東における地域秩序――「機会」と「脅威」をめぐる認識の相違とその含意」(『国際安全保障』第43巻第3号、2015年)ほか。

目次

  1. はじめに……………今井宏平 中東における非国家主体の重要性/日本におけるクルド民族主義組織に関する研究の不足/他国のクルド問題に関する研究の発展/本書の特徴/本書の限界/本書の構成 第1章 クルド人リーダーたちの肖像――バールザーニー親子,ターラバーニー,オジャラン……………今井宏平・吉岡明子・青山弘之 はじめに 1 バールザーニー親子とターラバーニー (1) 部族長ムスタファー・バールザーニーの反乱 (2) ムスタファー・バールザーニーとKDPの確執 (3) ジャラール・ターラバーニーとマスウード・バールザーニー (4) KDP とPUK のライバル争い (5) 自治と独立をめぐるビジョンの違い 2 オジャランの戦略と志向 (1) 前期オジャラン (2) 後期オジャラン おわりに 第2章 イラク・クルディスタン地域の国家性――未承認国家論からの検討……………吉岡明子・廣瀬陽子 はじめに 1 未承認国家の定義とイラク・クルディスタン地域 (1) 領土支配と事実上の独立状態 (2) 国家制度と正統性の論証 (3) 独立の表明と国際的な承認 (4) 独立に対する住民の支持 2 自治と独立の選択――ベネフィットとコストからの検討 (1) 自治(イラク国家に所属すること)のベネフィットとコスト (2) 独立を選択することのベネフィットとコスト おわりに 第3章 シリアにおける移行期正義の限界と可能性――クルド民族主義組織PYDによる自治の試み……………青山弘之・阿部利洋 はじめに 1 シリア内戦の実態 (1) 重層的紛争 (2) 「代理戦争」 (3) 膠着という終わり 2 シリア内戦における移行期正義 (1) 移行期正義概説 (2) シリア内戦における既存の移行期正義構想 (3) 紛争解決に向けた諸プロセス 3 PYDの活動 (1) PYD とは?――台頭の秘密 (2) 紛争解決プロセスから排除された理由 おわりに 第4章 クルディスタン労働者党(PKK)のリクルート方法――なぜ人材を確保し続けてこられたのか……………今井宏平・岡野英之 はじめに 1 先行研究概観 (1) 武装組織へのリクルートに関する先行研究 (2) PKK のリクルートに関する先行研究 (3) 分析視角 2 PKKの闘争とリクルート (1) PKK 登場以前 (2) PKK の設立(1972-78年) (3) トルコでの活動の行き詰まり(1978-83年) (4) トルコでのゲリラ戦の展開(1984-89年) (5) PKKの軟化とオジャランの逮捕(1990-99年) (6) 1999年のオジャラン逮捕以降 3 イデオロギーの変遷とリクルート (1) マルクス・レーニン主義思想 (2) トルコ国家との併存を模索する おわりに 第5章 イランにおけるクルド民族主義組織の動向と外部アクターの影響――非対称的関係から見る地域の不安定化要因……………今井宏平・辻田俊哉 はじめに 1 イランにおけるクルド人居住地域とクルド民族主義組織の特徴 (1) 地域の特徴 (2) クルド民族主義組織の特徴 2 非対称的関係から見る地域情勢 (1) なぜ紛争が長期化するのか――非対称的関係の特徴 (2) イランとクルド民族主義組織間における非対称的関係 3 クルド民族主義組織の動向と外部アクターの影響 (1) KDPIとその関連組織 (2) PJAK (3) 外部アクターの影響 おわりに おわりに……………今井宏平 クルド人リーダーたち/イラク/シリア/トルコ/イラン/国際関係論における主権国家の在り方の再考/今後のクルド問題に関する研究の課題 あとがき……………今井宏平 クルド問題略年表

本文紹介

今日の中東政治において存在感を増しているクルド人の実像に迫り、研究のフロンティアを切り拓く。

抜粋:「アラブの春」を発端とする紛争勃発から10年。主権国家の秩序がいっそう揺らぎ、非国家主体の影響力が増すなかで、その代表的存在であるクルド人勢力についての学術研究はいまだに手薄い。地域研究、国際関係論、政治学の方法論を駆使して世界最大規模の国を持たない民族、クルド人の実像に迫り、クルド問題研究のフロンティアを切り拓く。