書籍のレビュー・概要
一九一六年、大英帝国の外交官であった男に死刑が執行された。その名はロジャー・ケイスメント。植民地主義の恐怖を暴いた英雄であり、アイルランド独立運動に身を捧げた殉教者である。同性愛者ゆえに長くその名は忘れられていたが、魂の闇を含めて、事実と虚構が織りなす物語のうちによみがえった。人間の条件を問う一大叙事詩。 ■内容紹介 20世紀初頭、コンゴとアマゾンの先住民に対する虐待、植民地主義の罪を告発したアイルランド人がいた。その名はロジャー・ケイスメント、大英帝国の外交官である。しかし彼は祖国アイルランドの独立を成し遂げるため、第一次大戦中はドイツに接近、反逆罪で絞首刑となる。同性愛者であったが故に翻弄されていく運命。恩赦の請願さえも聞き入れられず、希望は潰えてしまうのか。英雄であり、反逆者でもあった百年前の外交官を描きながら、歴史書よりも深く善悪の境界を問い、評伝よりも大きなスケールで人間の不思議さに迫る。ノーベル賞作家がよりよき世界を希求するすべての人に贈る未来のための賛歌。 ■推薦コメント 世界史を動かす原理を一身に体現した人物の物語。彼は英国領事として赴任した先のコンゴとアマゾンで先住民の惨状を告発する。更には郷里アイルランドの独立を謀って、絞首刑になる。しかも、この男は実在した。 池澤夏樹 あらゆる混沌と不条理が生茂るジャングルの中を傷だらけになって彷徨いながら、人権という「夢」へ情熱の炎を燃やし尽くした主人公に圧倒された。バルガス=リョサは、史上最強の魂の強壮剤を文字の中から創り上げた。 ヤマザキマリ リョサの魔術は、すさまじい差別の暴力と不正義に抗っているのが読者の私であるかのように錯覚させる。いや、錯覚ではないのかもしれない。 星野智幸