書籍詳細

書籍のレビュー・概要

髑髏や砂時計、蝋燭や楽器、果物などの定型的モチーフを組み合わせ、生のはかなさと死を表現する――17世紀ヨーロッパでは静物画の一ジャンルである〈ヴァニタス画〉が盛んに制作された。それから数世紀。今もアーティストは〈ヴァニタス」に触発されている。現代に甦った〈ヴァニタス〉を具体例に即して丁寧に読み解く。図版多数。

甦るヴァニタス

Takumi ブックス

甦るヴァニタス

〈はかなさ〉と向き合う現代美術

著者・関係者
香川 檀 編・ヴィクトリア・フォン・フレミング 編・結城 円 編
カテゴリ
人文・社会科学書
刊行日
2026/01/29
体裁
A5・上製・348頁
ISBN
9784000254786
在庫状況
在庫あり

価格:5,500 円

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著者略歴

  • 【編著者】 香川 檀(かがわ・まゆみ) 武蔵大学名誉教授。ドイツと日本の近現代美術、表象文化論、ジェンダー論。著書に『想起のかたち――記憶アートの歴史意識』(水声社、2012年)、『ハンナ・ヘーヒ――透視のイメージ遊戯』(水声社、2019年)、批評文に「写真に似たもの――ゲルハルト・リヒターの〈記憶絵画〉と女性イメージ」(『ユリイカ』2022年6月号)、論文に“Kaiser und Vanitas: Nobuyuki Ōuras Lithografie-Serie Holding Perspective”(Victoria von Flemming/Julia C. Berger(Hg.), Vanitas als Wiederholung, Berlin 2022)など。 ヴィクトリア・フォン・フレミング Victoria von Flemming ブラウンシュヴァイク美術大学教授(中近世美術史)、ヴァニタス研究プロジェクト研究協力者。共編著にBarock-Moderne-Postmoderne: Ungeklārte Beziehungen(Wiesbaden 2014); Vanitas. Reflexionen ūber Vergänglichkeit in Literatur, bildender Kunst und theoretischen Diskursen der Gegenwart(Paragrana, Bd. 27, 2018); Vanitas als Wiederholung (Berlin2022)など。 結城 円(ゆうき・まどか) 九州大学大学院准教授。写真史・写真論、イメージ学、比較文化論。著書にIch-Fotografie: Kommunikationsformen in Japan seit den 1990er Jahren (Berlin 2013)、展示図録寄稿文に“Japanische Fotografie in Deutschland” (SabineSchulze/Esther Ruelfs(Hg.), ReVision. Fotografie im Museum fūr Kunst und Gewerbe Hamburg, Göttingen 2017)、「私は何を見て、あなたは何を見る?」(『澤田知子 狐の嫁いり』東京都写真美術館、青幻舎、2021年)など。 【以下、掲載順】 仲間裕子(なかま・ゆうこ) 立命館大学名誉教授。ドイツ近現代美術。著書に『C.D.フリードリヒ:画家のアトリエからの眺め――視覚と思考の近代』(三元社、2007 年)、『フーゴ・フォン・チューディ――ドイツ美術のモダニズム』(水声社、2022年)、共編著に『風景の人間学――自然と都市、そして記憶の表象』(三元社、2020年)、訳書にハンス・ベルティンク『イメージ人類学』(平凡社、2014年)など。 石田圭子(いしだ・けいこ) 神戸大学大学院教授。美学・芸術論。著書に『ナチズムの芸術と美学を考える――偶像破壊(イコノクラスム)を超えて』(三元社、2023年)、『美学から政治へ――モダニズムの詩人とファシズム』(慶應義塾大学出版会、2013年)、共訳書にボリス・グロイス『アート・パワー』(現代企画室、2017年)など。 ミーケ・バル Mieke Bal アムステルダム大学名誉教授。文学・文化理論、美術史、ビデオ作家。著書にImage-Thinking. Artmaking As Cultural Analysis (Refractions : At the Borders of Art History and Philosophy, Edinburgh 2022); Narratology. Introduction to the Theory of Narrative (Toronto 1985/2017)など。 岡添瑠子(おかぞえ・りゅうこ) 早稲田大学非常勤講師。ドイツと日本の現代美術史。論文に「イミ・クネーベル作品における「見えないもの」と「見ること」」(『表象・メディア研究』第13号、早稲田表象・メディア論学会、2023年)など。 カタリーナ・ズュコラ Katharina Sykora ブラウンシュヴァイク美術大学名誉教授(19世紀・20世紀美術史)。著書にDie Tode der Fotografie (2 Bände, Paderborn 2009/2015); Überfliegen. Figuren erratischer Wahrnehmung (Göttingen 2021); ZwischenWelten. Ulrike Ottingers Filme im Spiegel der transatlantischen Kritik (Göttingen 2022)など。 鈴木賢子(すずき・よしこ) 京都芸術大学特任准教授。美学、芸術理論、視覚表象論。論文に「〈モンタージュ〉論から見るアドルノ美学――モデルネ芸術と死の原理」(藤野寛/西村誠編『アドルノ美学解読』花伝社、2019年)、「W.G.ゼーバルト『土星の環』とヴァニタス」(『武蔵大学人文学会雑誌』第55巻第2号、2024年)、分担翻訳にT.W.アドルノ『美学講義(一九五八/五九年)』(藤野寛/西村誠監訳、講談社、2026年(近刊))など。 クラウディア・ベンティーン Claudia Benthien ハンブルク大学教授(近現代ドイツ文学/文化理論)。著書にHaut. Literaturgeschichte-Körperbilder-Grenzdiskurse(Hamburg 1999, 邦訳『皮膚――文学史・身体イメージ・境界のディスクール』田邊玲子訳、法政大学出版局、2014年)、共著にPublic Poetry. Lyrik im urbanen Raum(Berlin 2023)、共編著にVanitasund Gesellschaft (Berlin 2021)など。 ユリア・カテリーネ・ベルガー Julia Catherine Berger 元ブラウンシュヴァイク美術大学研究員。著書にFotografie und Vanitas. Zeitreflexive Transformationen barocker Blumenstillleben (Berlin 2025)。 アンネ・オイスターシュルテ Anne Eusterschulte ベルリン自由大学教授(哲学史)。Wallstein ハンナ・アーレント全集の共同編者。著書にErscheinen. Imagination als Prozess der Theorie (Hamburg 2016); Mimesis oder ästhetische Wahrheit (Berlin 2024)、共編著にHannah Arendt und die Weltlichkeit der Künste (Berlin 2025)。 マーレン・ゴツィック Maren Godzik 福岡大学教授。美術と社会、高齢者と住まいと暮らしの研究。著書にAvantgarde Männersache? Künstlerinnen im Japan der 50er und 60er Jahre des 20. Jahrhunderts(München 2006)、論文に“In a State of Liminality: Kimonos as Motifs of Temporality in the Photography of Ishiuchi Miyako”(The Journal of Asian Arts & Aesthetics, Vol. 9, Tainan Art Museum 2023)など。 カロリン・ボールマン Carolin Bohlmann ウィーン美術アカデミー教授(保存修復)。ベルリン・ハンブルク駅現代美術館の保存修復官。分担執筆に、I. Jessen/F. Senkpiel(Hg.), Lexikon der Lebensmittel als Kunstmaterial. Von Apfel bis Zucker : Symbolik, Restaurierung und Kunstgeschichte des 20. und 21. Jahrhunderts (Berlin 2024)など。

目次

  1. まえがき 「はかなさ」と現代の芸術――ヴァニタスをめぐる三つの問い ……………香川 檀 序 論 現代芸術におけるヴァニタスの回帰――西洋/非西洋、交差するまなざし(抄訳) ……………ヴィクトリア・フォン・フレミング(訳 香川檀) 一、西洋と日本の「はかなさ」 二、ヴァニタスのセルフポートレイト 三、グローバル・サウスのヴァニタス 四、ヨーロッパのヴァニタスと日本の〈はかなさ〉の融合 第Ⅰ部 現代のヴァニタス―生死と時間の戯れ 第1章 杉本博司の死生観とヴァニタスの美学――《ヘンリー八世》をめぐる表象の歴史 ……………仲間裕子 はじめに 一、「ジオラマ」をめぐる死生観 二、「蝋人形館」から「ポートレート」へ 三、ヴァニタスの美学と「肖像画」 四、杉本博司の《ヘンリー八世》とハンス・ホルバイン(子)のヴァニタス表象 五、「ポートレート」《ヘンリー八世》―仮面と死、永遠性の表象 結 第2章 草間彌生とヴァニタス―〈花/女性〉と死をめぐって ……………石田圭子 はじめに――草間彌生とヴァニタス 一、自画像としての花 二、女性自身のメタファーとしての花 三、性と死――抑圧の内面化と「自己消滅」 四、死とはかなさを超えて――女性の〈生/性〉の肯定 おわりに――「ヴァニタス」というテーマと女性アーティスト 第3章 ジャン・ティンゲリー――ヴァニタス、そしてエフェメラの芸術(抄訳) ……………ヴィクトリア・フォン・フレミング(訳 香川 檀) 一、素材およびメディウムの図像学 二、エフェメラルなもの――ヴァニタスなきバロック? 三、生の車輪と死の舞踏 四、フォーミュラⅠと大量虐殺 第4章 生死のはざまのヘテロ・クロニカルな実験――時間管理に対するヴァニタスの反乱(抄訳) ……………ミーケ・バル(訳 岡添瑠子) はじめに 一、マルレーネ・デュマスの頭蓋骨――生者たちの顔 二、動く静止画――ジャネット・クリステンセンによる時間の断片 三、ナリニ・マラニ――緊急性としてのヴァニタス 四、頭蓋骨の内部――マヤ・ワタナベの共感的――政治的な死のヴィジョン 第Ⅱ部 メディウムが担うはかなさ――写真とビデオ 第5章 終わりと飛び去り――髑髏、昆虫、そして現代写真におけるヴァニタスのふたつの時間性 ……………カタリーナ・ズュコラ(訳 結城 円) 一、人間のはかなさの記号としての頭蓋骨――その歴史的な(再)コード化 二、飛び去り/蠅、あるいは生きている存在のはかなさ 三、一時的な出会い――蠅と頭蓋骨 第6章 畠山直哉の写真における川の表象――〈無常〉をめぐる一考察 ……………鈴木賢子 はじめに 一、気仙川のほとりのクルミの木 二、うつろう世界と写真が捉えるもの 三、漂うまなざし 四、写真と〈無常〉 結び 第7章 写真の間文化的な時間性――荒木経惟『TOMBEAU TOKYO』におけるヴァニタスと無常 ……………結城 円 はじめに 一、花と女性身体に投影されるヴァニタスと無常 二、写真メディアにおける時間性 むすび 第8章 ビデオアートにおけるヴァニタス静物画――バロックのモチーフとその時間性について ……………クラウディア・ベンティーン ユリア・カテリーネ・ベルガー (訳 石田圭子) 一、静物に生命を吹き込む――暗示から断片化へ 二、クイックモーション――メディアによって衰退を加速させる 三、ループの使用――生成と消滅の永遠なる循環 四、「本当の時間」という感覚――生成されるヴァニタス 第Ⅲ部 ヴァニタスの変奏――神話と社会 第9章 「居場所」のはかなさ――イケムラレイコの描く“妣の国”と死 ……………香川 檀 はじめに 一、少女と「うみのこ」 二、母のいる風景――「コスミックスケープ」 三、ヴァニタス・モチーフとしての花・骨・亡骸 四、妣の国/常世(常夜)の国 むすびに 第10章 古代の残存と、バロック的時間経験の形象――サイ・トゥオンブリー作品のオルフェウス主題について ……………アンネ・オイスターシュルテ(訳 鈴木賢子) はじめに 一、失われた古代? 二、「うつろい」の文字 三、オルフェウス 四、文字の時 五、オルフェウスのヴェール――不滅の残響 第11章 ゴミの化石を作るとき――三島喜美代の作品における物質と時間性 ……………マーレン・ゴツィック はじめに 一、ゴミとしての情報 二、巨大化するゴミ、巨大化するアート 三、理解不可能となった過去 四、現代的ヴァニタスとしての三島の作品制作 おわりに 第12章 はかなさの永遠性?――美術館における「エフェメラル」な作品の保存修復について ……………カロリン・ボールマン(訳 仲間裕子) あとがき……………結城 円

本文紹介

生のはかなさと死の表現――今もアーティストたちは〈ヴァニタス〉に取り組んでいる。日独の美術研究者による、その読み解き。

抜粋:髑髏や砂時計、蝋燭や楽器、果物などの定型的モチーフを組み合わせ、生のはかなさと死を表現する――17世紀ヨーロッパでは静物画の一ジャンルである〈ヴァニタス画〉が盛んに制作された。それから数世紀。今もアーティストは〈ヴァニタス」に触発されている。現代に甦った〈ヴァニタス〉を具体例に即して丁寧に読み解く。図版多数。