書籍のレビュー・概要
ミクロの世界の生き物たちは泳ぎの達人だ。SFのように私たちが小さくなってミクロの世界でバタ足をしても、実はまったく進まない。ミクロの探検隊員になって、微生物からマイクロロボットまで流体力学を駆使した「泳ぎ」の秘密を探る。数学・物理・生物・化学がダイナミックに融合する最先端科学の現場へようこそ! ◆参考動画・参考文献 ☞ PDFファイル [760KB] 著者からのメッセージ 自分の体が小さくなって人の体内に入って病気を治したり探検するというのは、SFの定番ストーリーの一つです。この本で取り上げるミクロの流体力学には、そんな空想物語が最先端の学術研究につながっていくワクワク感があると思っています。 顕微鏡を覗けば、肉眼では見えなかった小さな生きものたちが泳ぎ回っている様子を見ることができます。私も参画している科学研究費領域「ジオラマ行動力学(ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学)」の ウェブサイト(☞ https://diorama-ethology.jp/contents/microorganisms.html) では、さまざまな微生物の動画を公開していますので、ぜひご覧になってください。その様はとてもダイナミックで、そして賢い! 本書で詳しく紹介するように、ミクロの世界では、私たちがイメージする泳ぎはまったく通用しなくなるからです。まるで自然現象がSFなのではないかと思えるほどの驚きがあります。 流体力学というと、古典的な分野と思われている方もいるかもしれませんが、ビックテータやAI研究の最前線として、そして環境・エネルギー問題の切り札として、近年新たな盛り上がりを見せています。そして、驚かれるかもしれませんが、そんなAIブームと双璧をなす盛り上がりを見せているのが、生物の流体力学です。流体力学の世界最大の学会であるアメリカ物理学会流体力学部門の発表演題数でも、最も多い部類になっています。私が以前に訳した 『流体力学超入門』 の著者エリック・ラウガ先生は生物流体力学の第一人者で、『超入門』の中でも現代風の切り口で流体力学像が描かれています。 生命そのものを知る面白さがあり、数学の力を使って想像力がふくらみ世界が広がっていく爽快さがある。そして、新しいサイエンスやテクノロジーが生まれる場所――そんな驚きのミクロの流体ワールドに本書を通じて触れていただけたら幸いです。(談)